借金の返済が滞ってしまうと、なかなか正常な状態に戻すのは難しくなります。
 
特に2~3ヶ月も遅れてしまうと、正常に戻すだけでも多額の支払いが必要になることは珍しくありません。

 

「もう…いいや」「逃げようかなぁ」なんてヤケになることもありますが、現実的にはそのようなことはできませんよね。
 
かと言って放置していると、督促も嫌だし借金も増えてしまう可能性もあります。そこでネットで調べて見つけたのが「債務整理」。
 
「なんだぁ~借金が払えなくなったら債務整理をすればいいんだ」「簡単だしなんかお得!」と、見つけただけで借金がなくなったかのような喜びようです。
 
しかし債務整理は全てのケースで上手く行く訳ではありません。彼は知らなかったのです。債務整理にも失敗があることを。
 

自分の状況に合った債務整理を選ぶことが大切

 
債務整理とは借金の返済に行き詰った時に債務を見直す制度で、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4種類があります。
 
【任意整理】
 
基本的に弁護士や司法書士などの代理人を立てて、債権者と利息の軽減や元本の減額を求める話し合いを行う制度です。
 
裁判所などの公的機関は介入せずに、全て民間同士の話し合いで終了します。
 
近年ではグレーゾーン金利による「過払い金返還」が主な整理内容となっており、過払い金がない借入れでは効果が少ないこともあります。
 
【特定調停】
 
裁判所が仲介し債権者との調停を行う制度です。特長としては調停を行う金融会社を選択することが可能で、1社ごと話し合いを行う必要があります。
 
特定調停は代理人に依頼しなくても、債務者自身で行うことができる制度ですが、そのためには十分な準備と時間がかかることを覚悟しなくてはいけません。
 
また調停にかかる費用も格安で済むことから、債権者が少ない借入れの場合では自分でチャレンジするのもよいでしょう。
 
【個人再生】
 
個人再生は全ての借金に対する再生計画を裁判所に認められることで、債務を1/5までに減額できる制度です。
 
(返済期間は原則3年)つまり自分の借金返済プランを認めてもらうことで、大幅な借金の減額ができることになります。
 
さらに個人再生では「住宅資金特別条項(住宅ローン特例)」と呼ばれる特例があり、これを利用すると再生計画から住宅ローンを除くことができます。
 
例えば、A銀行(住宅ローン)、B社(サラ金)、C社(信販)から借入れを行っているケースでは、B社とC社に個人再生をかけて、A銀行は今まで通りの返済を行うことが可能になるのです。
 
そうすることでA銀行の返済には影響がないことから、自宅を売却する必要はありません。
 
つまり自宅を残したまま、他の債務を圧縮できる都合のよい債務整理なのです。
 

【自己破産】
 
自己破産はどうやっても返済ができない状態になった場合に選択される債務整理です。
 
裁判所に自己破産の申し立てを行い、破産決定を認めてもらい、最終的に免責決定が出されることで借金は全て消滅されます。
 
200万円の借金でも5000万円でも免責が認められると、全ての債務がチャラになるのです。自己破産は債務者にとっては究極の債務整理ですが、債権者にも大きな負担を与える制度です。
 
そのためにメリットだけでなく、デメリットもあることを覚えておなくてはいけません。
 

状況によっては損をする場合もある任意整理

 
近年注目されている任意整理ですが、その理由はクレーゾーン金利における「過払い金」の魅力です。
 
つまり「任意整理を行うとお金がもらえる」などの誤った情報が反乱しており、それが任意整理の失敗に繋がっているのです。
 

任意整理を決断する前に検討することは、過去の借金の借入れ状況についてです。
 

【過払い金がもらえる可能性のある条件】

  • 2008年(平成20年)以前からの借入れである
  • 借入れ額が大きいこと
  • 借入れ契約の解約を行っておらず継続して利用していること
  • 元本よりも利息を中心に支払っていた
  • その他

このような条件に当てはる借入れでは、任意整理を行うことで高額な過払い金を得る可能性がありますが、反対に該当しない人は過払い金が少なかったり、もらえなかったりすることがあります。
 
【任意整理の失敗例】
 
木下さんは昔から大手サラ金を利用しており、テレビで見た法律事務所のコマーシャルで、過払い金の存在を知りました。
 
早速、法律事務所に電話をかけて、任意整理を行ってもらうことになったのです。
 

この時の条件は弁護士の着手金が10万円と、成功報酬が過払い金の20%でした。
 

しかし弁護士が計算してみると、木下さんの借金は過去に一度完済しており、それから10年以上経過しています。
 
また現在もそこの金融会社と取引しているのですが、それは前の借入れを完済して7年後から新たに契約したものです。
 
つまり木下さんの過去の借り入れによる過払い金は、既に「時効の消滅状態」であり、過払い金を請求することはできません。
 
弁護士が他の債務を確認しても、過払い金は数万円にしかならなかったのです。
 

木下さんは弁護士に「それなら任意整理を止めて下さい」と言うしかありませんでした。結局弁護士へ着手金10万円を支払っただけで終わったのです。<終>
 

このように任意整理の成功の鍵は、「過払い金がどの程度戻るか?」に集約されます。
 
最近では着手金が無料だったり、十分に調査してから契約したりする法律事務所も増えているので、十分に確認してから行うようにしたいですね。
 

勉強不足が特定調停の失敗の原因

 
特定調停は債務者自身が安い費用でできる債務整理ですが、それ故に失敗も多くあるのが現実です。
 
実際の調停では裁判所に債権者を呼んで交渉しますが、その時に仲介してくれるのが裁判官が任命した「調停委員」です。
 

彼らは債務者の話しを聞いて、債権者に和解案を提示しますが、調停委員が内容をよく理解していないと思いもしない展開になることがあります。
 
【特定調停の失敗例】
 
太田さんは借金の返済で生活が苦しく、債務整理を考えていました。彼の債務は比較的新しい借金であり過払い金は期待できません。
 
また借入先も2社のみです。
 
色々と考えた結果、弁護士費用を出すのも勿体ないので、自分で特定調停を行うことにしたのです。
 
さっそく裁判所へ行き、申し立てを行います。裁判所からは「十分に返済記録を調べてから調停に来て下さい」と説明を受けた太田さんです。
 
しかし彼は甘く見ていて、とりあえず自分で持っているだけの記録しか準備していなかったのです。
 

調停が始まり、まずは太田さんが調停委員に説明を行います。しかし、調停委員は「なぜ返済ができないのか?」と理解をしてもらえません。
 
また、返済記録も不十分だったために、「これでは債権者と話し合いができませんよ」と言われる始末です。
 

また「もう少し頑張ればちゃんと返済できるでしょう」と諭されてしまうこともありました。結局、債権者との話し合いでも、債権者側が調停を蹴って不調に終わったのです。<終>
 

特定調停は話し合いなので強制力はなく、債権者側が断ることもできます。つまりそうならないためには、仲介してくれる調停委員を味方につけることが大切なのです。
 

太田さんは調停委員に十分な資料を提供することができませんでした。きっとそのような太田さんを見て調停委員も、呆れてしまったのかもしれません。特定調停は調停委員を味方に付けないと、失敗する可能性が高い債務整理だと覚えておきましょう。
 

個人再生には4つの失敗ポイントがある

 
個人再生は債務を1/5程度に圧縮する代わりに、認められるまでには厳しい審査があります。個人再生が失敗する4つのポイントは以下の通りです。

  • 個人再生申し立て時に棄却される
  • 個人再生手続き中に廃止される
  • 個人再生手続きが最終的に不許可になる
  • 個人再生認定後に取り消しになる

個人再生では借金を大幅に減額する代わりに、必ず成功させる計画が必要になります。
 
その意味で収入の確保は最も重要であり、それがないといくら申し立てを行ってもすぐに棄却されてしまうでしょう。
 

また原則として3年で返済しなくてはいけないので、十分に履行できる所得もポイントになります。また負債総額が5000万円以下(住宅ローンを除く)であることも条件になります。
 

申し立てを受理されても、計画案に疑問点がある場合は、裁判所から再提出を求められることもあり、その対応を怠ったり虚偽の計画案を提出したりすると、手続き中に廃止されることになります。
 

また債権者の反対によって個人再生手続きが廃止されることがあります。(小規模個人再生の場合)
 
せっかく個人再生が認可されても、計画通りの返済が行えない場合や、財産を債権者の同意なしに処分したりすると、個人再生の取り消しを受けることもあるので気を付けたいポイントです。
 
【個人再生の失敗例】
 
佐藤さんは債務整理を行う上で、自宅を手放したくないことから、自己破産ではなく個人再生を選択しました。弁護士に依頼をして再生計画を立て、裁判所に申し立てを行ったのです。
 
基本的に収入も安定していた佐藤さんは、手続きも予定通り進み、無事に個人再生が許可されたのです。佐藤さんの計画では3年間で全ての債務を返済しなくてはいけません。
 
初めの1年は予定通りの返済を続けていました。しかし佐藤さんの会社は営業不振から突然倒産してしまったのです。
 
収入の無くなった佐藤さんは必死で仕事を探しましたが、なかなか希望の仕事は見つかりません。そしてついに個人再生における返済が滞ってしまったのです。
 
返済ができなくなったことは、収入が無くなったのだから仕方がないことかもしれません。しかし債権者は個人再生の失敗を裁判所に申し立て、佐藤さんの個人再生は取り消されたのです。
 
最終的に佐藤さんは自己破産を選択せざるを得なくなり、自宅を失うことになりました。<終>
 
個人再生は最後まで計画通りに行わないと、債権者からの申し立てで取り消しになってしまいます。そうなると自宅を売却しなくてはならなくなり、結局は自己破産を選ぶことになります。
 
理由に関係なく計画通りの履行をすることが、個人再生にとって必須の条件なのです。
 

免責不許可事由に該当すると借金がなくならない自己破産

 
債務が多すぎてこれ以上返済ができなくなった場合に選ぶ自己破産は、借金を消滅させる究極の債務整理と言われています。
 
破産と言うと全ての財産を奪われて、裸で追い出されれるイメージがありますが、実際の自己破産は生活に必要な財産や金銭は最低限保証されています。
 
自己破産は裁判所に申し立てを行い、面接(審尋)を受けることで「破産の開始」の許可を得ます。多くのケースでは同時に「同時廃止」となり、破産手続きが終了することになります。
 
しかしこの時点では借金は消滅しておらず、「免責決定」を受けなくてはいけません。免責は債務を全て免除する決定であり、自己破産が認められても免責が得られないと借金はチャラにならないのです。
 
しかし免責はその効力の強さから債権者に大きな負担を与えてしまいます。そこで債権者の配慮も含めて「免責不許可事由」が定めらているのです。

  • 財産を隠している
  • 財産を破壊、売却した
  • 法に違反している借入れを知っていながら借りた
  • クレジットで購入した物を安価に売却した
  • 特定の債権者に優遇を計った
  • ギャンブル目的の借入れだった
  • 浪費によって借入れを増やした
  • 嘘や虚偽の説明をした
  • 7年以内に自己破産を行っている
  • その他

【自己破産の失敗例】
 
加藤さんは借金の返済ができなくなったことから、弁護士と相談して自己破産を行うことにしました。加藤さんの借金の多くはパチンコが原因だっったのですが、弁護士には「生活費」と嘘をついていたのです。
 
弁護士は加藤さんの話から、自己破産の手続きを勧め、数ヶ月後には無事に破産開始決定と同時廃止を受けることができたのです。
 
「後は免責だけかぁ」と安堵した加藤さんでしたが、ここから雲行きが怪しくなってきました。ある債権者が裁判所に異議を申し立てたのです。
 
その内容は加藤さんがある人だけに、借金を返済した事実があるとの内容でした。
 

実は加藤さんは免責不許可事由に該当する行為を行っていました。自己破産を弁護士に依頼すると、各金融会社に通知が送られます。
 
そうすることで各社からの督促もなくなり、返済しなくてもよくなるのですが、友人が務めている金融会社だけは密かに全額返済していたのです。
 

そのことを知った債権者は直ぐに裁判所に異議を申し立てました。さらに別の債権者からも加藤さんの借入れは、パチンコ目的との指摘がなされたのです。
 
どうも加藤さんは返済滞納の過程で、この債権者の面談でパチンコのことを話していたみたいです。
 

借金の全てがパチンコの費用とは考え難いので、大きな問題にはなりませんが、一定の債権者だけを優遇する行為は免責不許可事由に該当します。
 

結局、加藤さんは免責決定をもらうことができませんでした。破産はできたのですが、借金は消滅できなかったのです。<終>
 
自己破産は債権者に負担をかけることから、全てを平等に扱うことが原則です。
 
例え親しい金融会社や、友人であっても優遇したことが判明したら、免責を受けられないことになります。
 

自己破産をする場合には、免責不許事由をしっかりと理解するようにしましょう。
 

債務整理は無理強いをすることで失敗する

 
債務整理にはいくつかの種類がありますが、全てのもので失敗する可能性があります。失敗の多くは制度をよく理解しないで、不勉強のまま無理強いするところにあるようです。
 

債務整理は債権者にも大きな負担を与える制度です。よく制度を理解して、自分に合った債務整理を選ぶようにしましょう。
 
そして制度のルールを守って、失敗しない債務整理を行って下さい。